布ではなく写真に刺繍を施す奇妙なアーティストがいます。
しかも風景写真とかではなく人物写真、それも自分がシャッターを押した写真でもなく、そこらの蚤の市やスリフトショップなどで手に入れた、誰が撮ったのかも誰を映したものかもわからない写真を用いているそうなんです。
そのアーティストの名前は、ジュリー・コックバーンと言います。
https://www.flowersgallery.com/artists/view/julie-cockburn#works
学校で彫刻を専攻していた彼女は、日用品などさまざまな素材から彫刻作品をつくることを学んできました。
刺繍作品の制作においても自由に素材を選択しようとした結果、そのような写真に刺繍を施すことを思いついたのだそうです。
ジュリーが選ぶ写真はどれも色あせていて、なかにはかすれてしまっているようなものもあります。
長い時を経た写真に魅力を感じて、それと会話をするように刺繍をするのだとか。
そうしてカラフルに刺繍をされたセピア色の写真は、一つの作品として美しいコントラストを生み出している。
さらに幾重にも糸が縫い込まれることで刺繍には立体感が生まれていて、その立体性は後ろにある二次元の写真によって一層際立っています。
顔を覆い隠すように刺繍がされているのはいささか不気味ではありますが、二次元の写真と三次元の刺繍による「セッション」といえる作品なのかもしれませんね。