ベルリンにはブロックを積み上げてつくったような形のビルが数多く建っています。
それぞれ色や形にバリエーションはあるものの、どこか画一的で退屈な印象を受けます。
ベルリン在住のフォトグラファー、マルテ・ブランデンブルクはこれらの建物を撮影し、「Stacked」という作品集をつくり上げました。
なるべくフラットに見えるように建物から距離をとり、雲が写り込まないよう明るく晴れた日を狙って撮影したとのことで、たしかに写真だけ見ると、抽象的な絵画のように見えます。
意外なことに、画像処理はほとんど施していないそうです。
これらの建物の多くは戦後に建てられ、中流階級の人々にモダンで手頃な価格の住まいを提供してきました。
こうした状況は、戦後日本に大量供給された住宅団地に似ています。
しかし日本同様、時代の移り変わりにより段々この住宅から人々は立ち去って、郊外に一軒家を建てたり、都市部の歴史ある建築の中をリフォームして住むようになりました。
一方、この建物は経済的・社会的に負担を強いられている人々が住むものというイメージがついてしまいました。
戦後の住宅不足に対応するため、短期間に政府によるトップダウンの計画によって建てられたことで、一時は多くの人々に住居を与えてきたものの、供給が行き渡った現在では、むしろ品質の悪い、醜いコンクリートブロックの塊とみなされてしまっているのです。
しかし、こうした建物と伝統的な建物が混在していることが、ベルリンらしい景色と言えるのかもしれません。