私写真

「私小説」というカテゴリーがあるように、「私写真」といういうジャンルがあります。
私小説は作者が直接に経験、体験したことをもとに書かれた小説を言いますが、同じように私写真も撮影者の個人的な出来事や事柄をモチーフとして撮影された写真をさします。
わかりやすい代表的な例としては荒木経惟氏の「センチメンタルな旅」がまさに私写真であり、今なお語り草のような存在です。
さて、「私写真」という言葉を意識する以前にたまたま手に取った神蔵美子氏の「たまもの」には本当にびっくりしました。なんだこれは!というのが第一声で強烈な印象を受けたのを今でも覚えています。これが私写真というものか!と。
写真はもちろん人物名も実名なので作品の中に出てくる人物も含めて、それぞれの人生がノンフィクションドラマのように説得力と生々しさに撃たれます。
神蔵氏は「たまもの」から13年後、昨年2015年に刊行された「たまきはる」でもまた話題になりました。「たまもの」はいわゆる三角関係を撮影したもので、現在の配偶者である末井昭氏も著書「自殺」で現在でも話題を呼び、元配偶者の坪内祐三氏も常々エッセイなどを目にしていると、当人達だけの事柄なのに、写真を通してその私写真の中に引き込まれるかのような感覚があります。
「私写真」を撮る写真家を追って作品を見ていくという面白みもあります。

撮影機材・LED照明の専門店