知人のカメラマンが、牛乳の広告写真を撮影した際のお話をしましょう。
被写体はシンプルなグラスに入った、牛乳。シンプルな被写体だからこそ難しいのが照明ですね。
しかも広告写真の場合、その意図に沿った演出をしなければなりません。
牛乳という、食品の性質、安全性を前面に出したイメージ、そして清潔感が大切になります。さらに日常の飲み物としての親近感も必要になるかもしれません。
照明や、露出、角度などを変えながら、グラス一杯の牛乳ですが、撮影に時間がかかり、なかなか納得のいく写真が撮れなかったカメラマン。
そこで彼がとった行動とは?
なんとストローをとりだし、グラスの中に息をひと吹きしたのです。
当然牛乳は、ボコっと泡を立て、湖面のような平坦な表面が変化しました。
その行為を経た後、もう一度グラスの牛乳を撮影したら、今度はイメージしていた出来上がりに撮影できたのです。
つまり、美しく演出したものが、かえって日常とかけ離れた、まるで「つくりもの」のように写ってしまっていたのを、写真の中の「ブツ撮り」されたものではなく、普通の光景として切り抜くような演出をしたのです。
確かにグラスの中で「止まってしまった」ような牛乳はリアリティがないですよね。
きれいに、おいしそうに、といってそれだけを意識していると、食材を使った写真撮影は成立しない時があるのかもしれません。そんなお話でした。
撮影機材で一工夫