「サウジアラビア」といえば、ローブを身につけた人々や歩き回るラクダが暮らすベージュ色の砂漠の風景を思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、写真家のセリーヌ・ステラは、写真集「Nour」においてそのようなありふれた描写を避けて、サウジアラビアの活気ある色鮮やかな側面に焦点をあてたのです。
「Nour」とは「光」を意味するアラビア語です。
この作品では、ネオンサインの数々が撮影されています。
撮影が行われた港町ジッダは、メッカに向かう巡礼者が立ち寄るサウジアラビア第2の都市で、派手な電飾ディスプレイを構えた店や売店、屋台で溢れています。
異様なほどに魅惑的なディスプレイは、遠くの客を引きつけるためにつくられたのだそうです。
けばけばしい色に光り輝くこのネオンもまた、サウジアラビアの風景なのです。
これらのディスプレイは遠くから見ると、完全に真っ暗な砂漠の中、非常に目立って見えるんです。
ステラは非常に基本的なアラビア語しか話せなかったそうで、ストリートスナップのカルチャーがほとんどないサウジアラビアでトラブルに巻き込まれないよう、できるだけ目立たないように撮影は素早く済ませるようにしていたそうです。
使用したカメラは富士フイルムの「FUJIFILM X10」だけ。
オートフォーカスで画質はそう高くないため、店のネオンサインが発している不気味な輝きだけが強調されていて、作品の趣旨にピッタリなカメラと言えます。
「印象的な何かをとらえたかった」と言うステラにとって、ネオンも砂漠や砂丘と同様にサウジアラビアを表しているのですね。