1958年、今から60年以上前に起きたバラバラ殺人事件の捜査を密着して撮影した写真集が話題になっています。
撮影者は渡部雄吉氏(わたべゆうきち)、1924年生まれの写真家で報道写真などで国内外で活動、1993年にお亡くなりになりますがその前年には紫綬褒章も受章されています。
さて、なぜ今注目されているかというと、その1958年に起きた茨城県水戸市の千波湖(せんばこ)のバラバラ事件を捜査した二人の刑事を20日間密着して、聞き込みから会議の様子などを撮影した渡部氏の1000枚にも及ぶ写真が、50年以上経った2011年にフランスの出版社から「A Criminal Investigation (犯罪捜査)」という写真集として刊行され大ヒットし、日本でも2013年に刊行されたのをもとに2014年に作家 乙一氏が構成と文を担当し「張り込み日記」という写真集として再誕生したからです。
表紙だけからも「え、これは映画のポスター?」と思ってしまうくらい、演技をしているように見えてしまうくらいの白黒写真なのです。なにしろ「実際の捜査」の写真ですからね。
まさに実録写真集です。その時代、実際の捜査、白黒写真、あらゆる要素が圧倒する迫力を相乗させています。
フランスの出版社で刊行されたきっかけは、神保町でイギリスの古書店バイヤーがオリジナルプリントを発見したからそうで、ちょっとヴィヴィアン・マイヤーを想起させますね。
さてこの話題の2014年刊行の「張り込み日記」、撮影はオリジナルネガフィルムから、印刷はトリプルトーン(調子が異なる3版を使用し白黒写真を諧調豊かに表現する印刷方法)でシャドウ部のディテールにこだわっています。
そしてなぜかamazonにて価格が高騰しているのですが、出版元のナナクロ社で定価で購入することができます。