支援のしかた、それぞれ

前回お話したニューヨークでのチャリティープロジェクトのほかにも、興味深いプロジェクトがあります。
写真家、ヴォルフガング・ティルマンスが主宰している政治からジェンダー問題、アートに関する活動をしている非営利団体「Between Bridges」が、
今回の新型コロナウイルスによって経済危機に面しているクリエイターをサポートする活動を始動しました。
「2020Solidarity」というその名は直訳すれば「2020結束、2020連帯」といったところでしょうか。
40以上のアーティストが集い、デザインされたポスターをHPで見ることができます。それぞれのアーティストのポスターがどのようなチャリティーに関連しているかポスター下から
寄付サイトにリンクし、そこからクラウドファンディングとして参加できるシステムです。
ポスターは50€、$50、£50から参加でき、ポスターのサイズはA2(59.4×42cm)。
ヴォルフガング・ティルマンスが主宰しているだけあって、参加しているアーティストが豪華です。
アンドレアス・グルスキーにトーマス・フル、ジリアン・ウェアリングなどなど、そしてもちろんティルマンスも参加。

支援先は現在のロックダウンによってどの都市でも共通の問題になっているライブハウスやギャラリースペースなどさまざまです。
日本でもライブハウスや映画館や劇場など存続危機にさらされ、署名活動や支援について論じられていますが、
クラウドファンディングのようなプロジェクトをを通して支援できることができたら、まさに一緒に支援している実感があっていいですよね。
HPのポスターから支援先のサイトにリンクされていて、単に寄付をしてポスターを手に入れるのではなく、どの場所を支援しているのかもよくわかります。

作家のスティーヴン・キングがツイッターで次のような言葉を載せました。
「もし、あなたがアーティストはこの世に不要なものだと思うのなら、自粛期間、音楽や本や詩や映画やペインティングなしで過ごしてみてください。」と。
クリエイティブな活動とその作品群が私たちの生活の中にどれだけ浸透し、不可欠なものかということをこの時期再認識します。
支援のしかたも形もそれぞれ、そしてクリエイター、アーティストであるからこそ支援のしかたは無限大に形を自由にかえてプロジェクトに参加する楽しみさえも提示してくれます。

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ヴォルフガング・ティルマンスの支援プロジェクトが日本でも

前回、ヴォルフガング・ティルマンスが主宰する非営利団体が行っているプロジェクト、2020Solidarityについてお話しました。
これは、現在のパンでミックの影響で危機的状況にある文化的、音楽的施設やアートスペース、インディペンデントスペースを支援することを目的としたキャンペーンです。
賛同した50人以上の世界中のアーティストのポスターを販売し、その収益を参加施設が支援金として寄付されるキャンペーンです。
前回お話した際には海外のスペース、施設、プロジェクトなどでしたが、今回日本からも九つのスペースや施設が参加し、思い入れがある場所にも支援できることになりました。
キャンペーンの主旨に賛同しても海外の知らないスペースへは、なかなか現実味が帯びずポスター購入のみの目的になりがちですが(もちろんそれでも十分ですが)、知っているスペース、施設ならば
参加し甲斐がありますし、これまでは海外支援なので実質的にそれぞれのサイトは英語で、購入通貨は外貨だったので支援しづらいということもありました。

キャンペーの期間は5月27日から6月30日まで、各ポスターは一律6000円(税込み)、サイズはA2です。
支援方法は、ポスターの下にある寄付先のリンクをクリックすると、直接そのHPから好きなポスターを購入することができます。
ただしポスターの発送はキャンペーン終了後にベルリンから発送されるそうです。
前回よりもアーティスト参加が増えて、なんとウィリアム・エグルストンも参加しています。
好きなアーティストのポスターを購入して、大切な場所を支援できるなんて、参加すること自体嬉しくなるキャンペーンです。

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映画監督の視線

カメラマンや写真がテーマの映画、というカテゴリーがありますが、今回はそれに付随して「映画監督、撮影監督」をテーマに個人的に「写真を撮りたくなる」ような映画をご紹介します。
まず、カメラや写真がテーマの映画と言えばはじめに思い浮かぶのが、ミケランジェロ・アントニオーニの「Blowup」(邦題:欲望)です。
まだ写真やカメラに興味を持つ前に観た映画ですが、独特な撮影シーンやハービー・ハンコックの音楽とともに映像が記憶に残る映画です。
公開は1967年ですが、今観ても色あせるどころかミステリアスかつ不穏な空気に魅せられて見入ってしまいます。
さて、このBlowupの撮影監督はカルロ・デイ・パルマ、同じイタリア人映画監督のミケランジェロ・アントニオーニの作品に携わり、その後「ハンナとその姉妹」から多くのウッディアレン作品の撮影監督を
務めました。ちなみに題名のblow upは(フィルムを)引き伸ばす、と言う意味です。

写真家のキャリアと映画監督の作品を行き来する稀有な存在、瀧本幹夫さんが映画監督を務めた「そして父になる」「海街diary」も改めてじっくり観たい映画です。
「海街diary」では映画監督が撮影した写真が、写真集「海街diary」としても青幻舎から出版されました、その美しいことといったら。
映画監督、そして写真家としての視線を映画でも写真集でも楽しめる貴重な一本です。

個人的に大好きなミヒャエル・ハネケ監督の「Amour」(邦題:愛、アムール)。カンヌ国際映画祭でもパルム・ドールを受賞し注目された作品ですが、そのワンシーンワンシーンの美しさに
時間を忘れてため息さえ出るほど。
この「Amour」の撮影監督がダリウス・コンジ。彼の作品経歴を見ると「デリカテッセン」から始まり、デヴィッド・フィンチャーの「セブン」やベルナルド・ベルトルッチの「魅せられて」、ハネケの「ファニーゲーム」、
そしてウッディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」、2017年にはポン・ジュノの作品での撮影監督も務めています。
世界の名立たる、そしてタイプが異なる映画監督作品の撮影監督をしていることに驚きです。
好きな映画監督の作品を追いながら観るのも面白いですが、映画監督を追ってその作品を観るというのはいかがでしょう。
映画監督の視線と捕らえると、印象的なシーンが多く記憶に残り、実際に写真を撮影するとき、またはその前の構図を考えるときに参考、ヒントになるかもしれません。

行ってみたくなるフォトガイドブック

柔らかなタイトルの本が目に留まりました。
クリックしたのは撮影者が写真家のMOTOKOさんだったから。
出版社の青幻舎のサイトと、もうひとつ写真集と同じ名前のサイトにたどり着きました。
本のタイトルは「さがごこち」、そしてサイトは佐賀県のサイト、sagagocochi.jp。
「さがごこち」は「佐賀の日常にある、本当の魅力をさがして」というコンセプトで立ち上げられたウェブマガジンで、
本の「さがごこち」はローカルフォトの手法で撮影しているMOTOKOさんが佐賀に通って撮り下ろした写真と「さがごこち」のアーカイブの
フォトガイドブックとのこと。
やさしいタイトルと美しい地方の写真が表紙の「さがごこち」、手にとってみたくなります。同時にこんなふうに自分の故郷が一冊になったら素敵だなと思うのは、
ウェブマガジンの「さがごこち」がコンテンツを作る人たちの佐賀への愛情が伝わってくるからです。
サイト内は二つのコンテンツで構築され、ひとつは佐賀県出身の著名人の幼少時の思い出やことがらの紹介、もうひとつは佐賀県在住の人が今の佐賀県を紹介するローカルコラム。
つまりはコンセプトどおり「佐賀の日常の魅力」を存分に味わえる地方メディアであり、地方ガイドなんですね。
帯にはくるりの岸田繁さんのことば、「『さがごこち』と名付けられたこの一冊の本を片手に、佐賀県を旅されてください。」というもの。
今の時期だからこそ、やさしい光に包まれた地方へ旅に出たくなります。
ゆっくり旅ができるようになったら佐賀県に行ってみたくなるフォトガイドブック、それまでこのフォトブックとウェブマガジンを読んで脳内旅行に浸ります。

7日間のゴミ

米カリフォルニア州の写真家、グレッグ・シーガル氏の連作「7日間のごみ(7 days
of garbage)」が話題を呼んでいます。

http://www.greggsegal.com

人物が地面に寝転がったところを上から撮った写真なのですが、周りにはゴミがびっ
しりと散らばっています。
このゴミ、彼らが実際に出した1週間分のゴミだそうで。
シーガル氏の友人たちや近所の人々、ボランティアの人などが参加しています。

ゴミからそれぞれのライフスタイルを垣間見ることができます。
それぞれの個性がゴミから分かってしまうといったことだけでなく、1週間で出るゴ
ミの量の多さに驚かされます。
わざとやってない?ってぐらい、とにかくゴミが多い・・・。

自然の中に横たわる設定で撮ったのは「汚されていない場所などない」という現実を
示すためで、多彩な顔ぶれを登場させたのは「これはだれ一人として避けることがで
きない、普遍的な問題」ということを訴えたかったからだそうです。

アメリカのゴミ問題は深刻で、米国の人口は世界人口の5%ほどにもかかわらず、世
界全体のごみの約4分の1を占めていて、アメリカ人が1日で出すゴミの平均量はお
よそ1.8キロ。
これは1960年に行われた同調査の倍の量だそうです。

ゴミを出さないなんて無理だけど、少し減らす努力をしようと思わせる、とてもメッ
セージ性の強い写真です。
それにしても、アメリカ人ってやっぱりピザ大好きなんですね。

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ロック・バランシング

入ってしまうとは、こういうことを言うのでしょうか。
独自のアート、ロック・バランシングという、自然の環境で自然の石をつかって石のバランスによって積み重ねオブジェを作るものです。
その全くオリジナルでユーモアある活動をしているのがカナダ生まれのマイケル・グラブさん(Michael Grab)。
日本でもYouTubeなどのビデオで徐々に知られています。
彼のHPでもいくつものロック・バランシングの作品の写真をみることができますが、写真も圧巻ですが、彼の作品はビデオで観ると何倍も楽しめます。
石や岩をいくつも積み重ね、それらが絶妙なバランスを持って静止するまでカットなしで撮影されたビデオは、まさに息を飲みます。
何も使わないで積み重ねるオブジェは、驚嘆と賞賛の意味を込めて「重力が接着剤」といわれています。流れ続ける渓流の中で、湖のほとりで、森の中などなど制作されたオブジェの美しいこと。
バランスを得るのに時間がかかるために、渓流ではつららができている写真もあります。
自然の環境の中でロック・バランシングの作品は周囲のパノラマと溶け込み、作品にピントを合わせて背景がぼけているものから、作品と自然が一体になってピントが合っている写真まで、飽くことなく見ていたい作品の数々です。
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バックステージ シーン

インターネットが日常にあり、SNSが発達した現在、有名人、俳優、モデルなどの存在が身近に感じられるようになりました。
今のようなデジタル社会ではない時代、例えば女優さんの日常(プライベート)というものが表に出ることってありませんでしたよね。
今だったらインスタグラムで写真を投稿したり、ツイッターで個人的なことをつぶやいてみたり。
そんな個人的な投稿写真、ブログなどを通じて、表舞台ではないシーンやプライベートが覗けることが、興味深いし、面白いしということで載せる方、見る方、双方がなんともお得な感じです。
表舞台では、ツンとすませたクールなモデルでも、メイク中や、休憩中、待ち時間のシーンなど普段目にすることがない表情を見せたり、個人的な持ち物などが垣間見れば、そのアイテムがいきなり人気商品になったりと影響力もあります。
さて、そんな被写体のモデルばかりでなく、撮影中のバックステージを撮影した写真などもしばしば見かけます。つまり、被写体を撮影しているカメラマン込みのシーンも。
撮影セットシーン全体が見えるような写真の場合など、「ああ、こんな照明の仕方なんだあ」「レフ版の使い方」「あ、このカメラマンの使っているカメラってあれなんだ」なんてことが見えたりもします。撮影されているバックステージの写真と、実際に撮影された写真を見比べることができれば、本当に面白く、密かに勉強になります。
それもそのはず、アシスタントだって、現場で撮影のイロハを学びますから。いくら机上でノウハウを勉強しても実際のプラクティス(実践)を踏まなければ会得できません。
ちょっとこちらまで緊張感が伝わってくるような現場の雰囲気が垣間見れるバックステージ写真、じーっと見てみてください。
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カメラマンの服装

カメラマンの服装は黒?
という質問をされることがあります。もちろん決まりはありませんが、実際に黒っぽい服装が多く見られます。
それはなぜか?
まず、適切な露出をはかるため。
被写体に対してスポット測光のような露出計では影響することはないでしょうが、測っているカメラマンの衣服が影響してはいけないから、と言われています。
また、被写体の至近距離で撮影する際に、明るい系統の衣服を着ていると写り込んでしまう。そしてポートレートも顔をアップで撮る際にモデルの瞳の中に写り込んでしまうから、ということです。
どれも、本当かな?といわれそうですが、実際にブツ取りなどでツルツルした反射するような被写体の場合、近くで撮影すると多少なり影響が出る場合もあるので、「黒い服装が無難」ということはあるでしょうね。
もう一つの理由としては、文字通りカメラマンは黒子に徹するべきだからです。
人を撮影する際も、被写体のモデルの気が散ることなく進められるように。人が多くいる場所、例えばウエディング写真などは、カメラマン自身が動くことが多いため、それぞれのシーンで邪魔にならないために黒い服、ということはあります。実際にウエディングフォトで教会や会場にいるカメラマンが明るい色の服を着ているってことはないですよね。
それぞれの職業にはそれぞれのルールがありますね。
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写真集をつくる

デジタルカメラ時代になってから、手軽さゆえに、誰でもどこでもいつでも写真が撮れるようになって、それゆえに、写真の枚数も大量で、パソコンに取り込んでも「撮りっぱなし」状態の方も多いようです。
フィルム時代ならば現像して、グループ写真の場合には人数分焼き回しをして、アルバムに貼ってといったように写真を整理してましたが、気軽なデジタル写真は撮っても改めて整理したリプリントすることがまれになってきました。いつでもモニターで見れるからでしょう。
まとめて整理した際に、気に入った写真をプリントする方法もありますが、最近ではこんな趣向もあります。
それは写真集つくり。
写真をプリントし、アルバムをつくるのもいいですが、写真集として製本することも気軽にできるようになりました。写真集というと大げさのようですが、一冊から作成でき、サイズやページ数、紙の質なども選ぶことができ、作業そのものも楽しめます。
需要が増えているためか、最近では大手の出版社からオンラインで注文できるサイトまであります。
たくさんたまった写真を時期別に分けたりやテーマ別にまとめて写真集にするのはどうでしょう?
記録や記念だけでなく、プレゼントとして写真集をつくるという用途もあり、目的も作り方もどんどん多様になっていきそうです。
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ハッシュタグ

インスタグラムやTwitte、Fecebookなどに使われる記号、ハッシュタグ。
常用しているひとから、知っていても使わない人、そして「ハッシュタグ?」と聞き返す人までいるでしょう。
SNS上で、投稿した写真などにハッシュタグ(♯記号)を付けてフレーズや言葉、場所名などを表記することによって、カテゴリー化され、同じ文面、言葉のハッシュタグでタグ付けされた写真などを参照できるシステムです。
例えばこんな感じ。
愛犬の写真を投稿する際に投稿と同時に思いつく言葉をハッシュタグで、
「♯ペット♯フレンチブルドック♯散歩♯都内♯夕焼け♯日課の散歩中」といった具合にタグ付けすると、シャープ記号で付けられた言葉それぞれカテゴリーとなって、気になる言葉をクリックでき、同じ言葉で投稿した写真、動画、メッセージを見ることができます。「♯フレンチブルドック」をクリックすると世界中(世界中の人と繋がるために英語表記でタグ付けする人も多し)の人が投稿した写真が見れる、というシステムです。
これがなかなか面白い!
国内外で作品を発表している写真家の大森克己氏が、インスタグラムを始めて密かに写真ファンの間では話題を呼んでいますが、大森氏もハッシュタグの面白さを語っています。
自分が投稿した写真が知らない人が撮影したものとグループで分類される楽しさ!
ちなみに終了間近で残念ですが、そんな大森克己氏のインスタグラムで発表されたプロジェクトがプリント作品として展示された写真展が多くの写真家が展示を行っている山梨県、八ヶ岳のふもとのギャラリー、「ギャラリー・トラックス」で今週の日曜日、26日まで開催中です。
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