ヴォルフガング・ティルマンスの支援プロジェクトが日本でも

前回、ヴォルフガング・ティルマンスが主宰する非営利団体が行っているプロジェクト、2020Solidarityについてお話しました。
これは、現在のパンでミックの影響で危機的状況にある文化的、音楽的施設やアートスペース、インディペンデントスペースを支援することを目的としたキャンペーンです。
賛同した50人以上の世界中のアーティストのポスターを販売し、その収益を参加施設が支援金として寄付されるキャンペーンです。
前回お話した際には海外のスペース、施設、プロジェクトなどでしたが、今回日本からも九つのスペースや施設が参加し、思い入れがある場所にも支援できることになりました。
キャンペーンの主旨に賛同しても海外の知らないスペースへは、なかなか現実味が帯びずポスター購入のみの目的になりがちですが(もちろんそれでも十分ですが)、知っているスペース、施設ならば
参加し甲斐がありますし、これまでは海外支援なので実質的にそれぞれのサイトは英語で、購入通貨は外貨だったので支援しづらいということもありました。

キャンペーの期間は5月27日から6月30日まで、各ポスターは一律6000円(税込み)、サイズはA2です。
支援方法は、ポスターの下にある寄付先のリンクをクリックすると、直接そのHPから好きなポスターを購入することができます。
ただしポスターの発送はキャンペーン終了後にベルリンから発送されるそうです。
前回よりもアーティスト参加が増えて、なんとウィリアム・エグルストンも参加しています。
好きなアーティストのポスターを購入して、大切な場所を支援できるなんて、参加すること自体嬉しくなるキャンペーンです。

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映画監督の視線

カメラマンや写真がテーマの映画、というカテゴリーがありますが、今回はそれに付随して「映画監督、撮影監督」をテーマに個人的に「写真を撮りたくなる」ような映画をご紹介します。
まず、カメラや写真がテーマの映画と言えばはじめに思い浮かぶのが、ミケランジェロ・アントニオーニの「Blowup」(邦題:欲望)です。
まだ写真やカメラに興味を持つ前に観た映画ですが、独特な撮影シーンやハービー・ハンコックの音楽とともに映像が記憶に残る映画です。
公開は1967年ですが、今観ても色あせるどころかミステリアスかつ不穏な空気に魅せられて見入ってしまいます。
さて、このBlowupの撮影監督はカルロ・デイ・パルマ、同じイタリア人映画監督のミケランジェロ・アントニオーニの作品に携わり、その後「ハンナとその姉妹」から多くのウッディアレン作品の撮影監督を
務めました。ちなみに題名のblow upは(フィルムを)引き伸ばす、と言う意味です。

写真家のキャリアと映画監督の作品を行き来する稀有な存在、瀧本幹夫さんが映画監督を務めた「そして父になる」「海街diary」も改めてじっくり観たい映画です。
「海街diary」では映画監督が撮影した写真が、写真集「海街diary」としても青幻舎から出版されました、その美しいことといったら。
映画監督、そして写真家としての視線を映画でも写真集でも楽しめる貴重な一本です。

個人的に大好きなミヒャエル・ハネケ監督の「Amour」(邦題:愛、アムール)。カンヌ国際映画祭でもパルム・ドールを受賞し注目された作品ですが、そのワンシーンワンシーンの美しさに
時間を忘れてため息さえ出るほど。
この「Amour」の撮影監督がダリウス・コンジ。彼の作品経歴を見ると「デリカテッセン」から始まり、デヴィッド・フィンチャーの「セブン」やベルナルド・ベルトルッチの「魅せられて」、ハネケの「ファニーゲーム」、
そしてウッディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」、2017年にはポン・ジュノの作品での撮影監督も務めています。
世界の名立たる、そしてタイプが異なる映画監督作品の撮影監督をしていることに驚きです。
好きな映画監督の作品を追いながら観るのも面白いですが、映画監督を追ってその作品を観るというのはいかがでしょう。
映画監督の視線と捕らえると、印象的なシーンが多く記憶に残り、実際に写真を撮影するとき、またはその前の構図を考えるときに参考、ヒントになるかもしれません。

行ってみたくなるフォトガイドブック

柔らかなタイトルの本が目に留まりました。
クリックしたのは撮影者が写真家のMOTOKOさんだったから。
出版社の青幻舎のサイトと、もうひとつ写真集と同じ名前のサイトにたどり着きました。
本のタイトルは「さがごこち」、そしてサイトは佐賀県のサイト、sagagocochi.jp。
「さがごこち」は「佐賀の日常にある、本当の魅力をさがして」というコンセプトで立ち上げられたウェブマガジンで、
本の「さがごこち」はローカルフォトの手法で撮影しているMOTOKOさんが佐賀に通って撮り下ろした写真と「さがごこち」のアーカイブの
フォトガイドブックとのこと。
やさしいタイトルと美しい地方の写真が表紙の「さがごこち」、手にとってみたくなります。同時にこんなふうに自分の故郷が一冊になったら素敵だなと思うのは、
ウェブマガジンの「さがごこち」がコンテンツを作る人たちの佐賀への愛情が伝わってくるからです。
サイト内は二つのコンテンツで構築され、ひとつは佐賀県出身の著名人の幼少時の思い出やことがらの紹介、もうひとつは佐賀県在住の人が今の佐賀県を紹介するローカルコラム。
つまりはコンセプトどおり「佐賀の日常の魅力」を存分に味わえる地方メディアであり、地方ガイドなんですね。
帯にはくるりの岸田繁さんのことば、「『さがごこち』と名付けられたこの一冊の本を片手に、佐賀県を旅されてください。」というもの。
今の時期だからこそ、やさしい光に包まれた地方へ旅に出たくなります。
ゆっくり旅ができるようになったら佐賀県に行ってみたくなるフォトガイドブック、それまでこのフォトブックとウェブマガジンを読んで脳内旅行に浸ります。