動物と自然に癒されたい
こんな時期だからこそ、癒しを求めたくなります。
それは音楽だったり、読書だったり、パフォーマンスの鑑賞だったり、いわゆる文化というカ
テゴリーのものが、私たちのメンタル部分のバランスに大きく関わってきます。だからこそ生
活必須ではない文化が大切だと言われる所以でしょう。
美輪明宏さんがいっています、人間は肉体と精神でできていて、肉体に必要な食材や栄養素に
はとても敏感に反応するのに、精神に必要なものには無頓着だということを。
さて、写真もそのひとつですよね。今でこそ長きブームとなった猫写真などは、やはり癒され
るからこそ人気が続くのでしょう。生活している中で難しい局面でも、動物写真を見ただけで
ちょっとほっこりしたりしますよね。心持ちを、ちょっと変えるという大きな力があります。
来年没後25年を迎えられる星野道夫さんの写真が今でも私たちを魅了するのは、大自然の光景
とそこで暮らす動物たちの様子に癒されるからではないでしょうか。身近ではない光景なのに
星野さんの温かい視線を通して、写真の中にすーっと引き寄せられるかのように見入ってしま
います。
星野道夫さんの「新版 悠久の時を旅する」が10月10日の刊行されました。これを記念してパネ
ル展も行われます。
パネル展は11月1日から15日まで二子玉川蔦屋家電2Fギャラリーにて。
月: 2020年10月
アラーキー、80歳
アラーキー、80歳
今年、80歳の傘寿を迎えたアラーキーこと荒木経惟氏。
5月にその誕生日を迎え、6月にその60年の写真人生を振り返るような一冊が刊行されました。
タイトルは「荒木経惟、写真に生きる。」。
巻頭には撮り下ろしの48ページのグラビアが続き、そして12章で構成され、これまでのアラー
キーが撮影してきた写真とそれらにまつわるエピソードが語られます。巻末には写真入りでの
年譜が収録され、アラーキーのこれまでの歩みが凝縮されたような一冊で、写真集とエッセイ
集が合わさったようなつくりです。数ある被写体を巧みにアラーキー仕様に写真の中に収めて
きた彼の、一章ごとに読み進めていくうちにその時代のシリーズをあらためて観てみたくなり
ます。
巻頭の撮り下ろし写真が鮮やかな一方、愛弟子の野村佐紀子氏が撮影したアラーキーの白黒
ポートレートがまたなんともいい具合。
熟年のアラーキー ファンにはもちろん、アラーキーの写真を見始める人にも手引きのようで、
貴重な一冊でしょう。
ヴィヴィアン・マイヤーが観れる
ヴィヴィアン・マイヤーが観れる
2011年に写真集が刊行、2013年に制作されたドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤー
を探して」によって写真家ヴィヴィアン ・マイヤーの名が世界中に知れ渡りました。
映画は日本では2015年に公開されました。
日本での映画公開からもう5年の月日が経つんですね。
そして、今年日本で初めてヴィヴィアン・マイヤーの個展が開催されます。
個展のタイトルは「Self portraits」。
ベビーシッターなどをしながら15万枚以上の写真を撮影し、その一枚も公表することのなかっ
た数奇さ、写真家本人の不思議さも相まって、彼女の作品は私たちを魅了しました。
道で遊ぶ子供達や交差点を人が歩く写真、町の様子など、ストリートフォトグラファーと言わ
れるように興味深い作品はもちろんありますが、それでもやはり構図も角度も様々、室内や街
角などでの鏡に反射するセルフポートレートは私たちを魅了しました。
そんなヴィヴィアン・マイヤーの作品がやっと日本でも観ることができる機会。モノクロ20
点、カラー7点、計27点のセルフポートレート作品が展示される予定です。
1950年代初頭から1978年の間に撮影された作品ということなので、1951年にニューヨークの
工場で働き、1958年からシカゴのノースショアに移りベビーシッターの仕事を長い間した頃に
あたるでしょう。
休日はローライフレックスを持ってシカゴの通りを散歩しながら写真を撮影していた頃です。
世界各国で展覧会が開催され、今後もそのオファーは尽きることがないでしょう、日本でのこ
の機会、見逃せませんね。
会期は10月15日から11月28日まで、東京のAkio Nagasawa Gallery Aoyamaにて。
写真集、そして映画
写真集、そして映画
2008年に発行された写真集「浅田家」が今年2020年映画化されました。
赤々舎から発行された「浅田家」は現在重版7刷。サイトのページにもある通り、まさに「写
真集のベストセラー。
写真集が発行された当時からじんわりと、そして長い間話題を呼んでいたのは、これまでにな
い写真集であり真似ができないオリジナリティが際立っていたからでしょう。
2009年には「浅田家」で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞しています。
父と母、そして兄を巻き込んでの家族写真を撮影するために家族の休みを合わせて、場所や服
などを借り、みんなで作り上げていく家族写真は写真家本人が言う「記念写真」であり、7年の
月日をかけて作り上げた数々の「家族写真」は、それ自体が本当に映画を作り上げる過程のよ
うで、写真集発売から12年を経て映画となって公開されるのも不思議ではないほどの家族のス
トーリーが詰まっている写真集です。
映画化決定の発表があり、主演が二宮和也さん、お兄さん役に妻夫木聡さんというキャスティ
ングからも話題になり、10月2日の公開に向けてたくさんの媒体で映画「浅田家」について取
り上げられている記事やインタビューを見かけました。それによって写真集の「浅田家」も改
めて注目されています。
家族全員が撮影のために協力し実際に「出演」し、「演じる」。
これまでにも多くの「家族写真」の写真集はありますが、その多くは写真家が写真家の家族を
写すというもので、写される家族自身も参加して演じるというのはそうあるものではありませ
ん。
ワンカットのために協力し、お願いされたように振舞うことはあるかもしれません、しかし
「浅田家」の「家族写真」は「記念写真」として家族全員参加で全員共演なのです。
テーマは普遍的な「家族」、そしてアイデアがあっても実行し実現するのには難しい、この
「記念写真」。だからこそ唯一無二の写真集として朽ちることはないでしょう。
現場の様子が楽しく分かる「ニャイズ」
現場の様子が楽しく分かる「ニャイズ」
東京都写真美術館のサイトのフッター左部分にふたつのアイコンがあります。
ひとつはひと目見て分かる通りツイッターの鳥のアイコン、そしてその隣に猫のアイコンがあ
ります。なに?
それが「ニャイズ」、東京都写真美術館の広報誌別冊のアイコンです。
美術館ニュースとして「東京都美術館ニュースeyes(アイズ)」というものがありますが、そ
ちらは展覧会情報が紹介され、この別冊「ニャイズ」は現場での業務や学芸員の様子が率直に
紹介している漫画なのです。
なぜに「ニャイズ」か。
漫画家のカレー沢薫さんとのコラボレーションで、カレー沢さんのキャラクターの猫さんと飼
い主が東京都写真美術館に採用されるという設定から、猫漫画+eyesで、ニャイズ。
このニャイズが面白い!
私たちが美術館の展覧会で見るものは、ある意味「できあがったもの」ですよね、しかしひと
つの展覧会を企画し構成し展示し広報し開催するまでは、長い道のりでしょうが観覧者にはも
ちろん見えません。しかしその過程が興味深いところ。
最新ニャイズではこのコロナ禍での現場や展覧会の変更点、美術館としてのこれからの展望な
どがカレー沢さんのニャンズ(猫ちゃんたち)を介して面白くそしてわかりやすく描かれてい
ます。
展覧会と一緒にニャイズも読めば違う視点からも楽しめそうです。
ニャイズは毎月第三水曜日に掲載、バックナンバーも読むことができます。
各地の美術館や専門学校、書店などでも配布しているそうです。紙媒体も読んでみたいなあ。
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