みえないウイルスを写す
現在東京恵比寿のMEMにてアントワン・ダガタ展が開催されています 。タイトルは「VIRUS ウイルス」。
フランスがロックダウンを始めた2020年の3月から5月中旬までの約2ヶ月かけて撮影したプロジェクトで、これまでにフランス、メキシコ、スペイン、イタリア、中国、韓国、ウクライナで展示され、今回日本でこのシリーズが初めて展示されています。
ひと目見てアントワン・ダガタ作品だとわかる特徴あるスタイルは今回も然り、撮影にサーモグラフィーを使用した作品です。
世界中を襲った新型コロナウイルスのパンデミックは、ウイルスという存在が見えないからこそ恐怖であり捉え所のないものですが、その「見えない」ウイルスを温度によって目に見えることができるサーモグラフィーを使ったのです。被写体とそして撮影現場にコミットする撮影方法に重きを置くアントワン・ダガタらしい手法とアイデアでまたひとつアントワン・ダガタの代表作となるのではないでしょうか。
撮影は人のいない閑散とした路上、ぽつりぽつりとしか人がいない街中、病院内の治療中の様子など、ぼんやりと浮かび上がるサーモグラフィーだからこそ煽られるような恐怖感を感じます。
展覧会会場では毎週土日に120インチスクリーンでの映像作品の上映が完全予約制であります。無料ですが定員が各上映につき5名なので開催期間の3月6日までチケットを取るのに難しいかもしれません。大型スクリーンでの鑑賞が出来なくてもYouTubeにて公開中です。約8分の映像は画面を3分割し撮影写真を写し続けるのですが、サーモグラフィーが写し出す「ウイルス」が不気味です。
写真集としても、本人が運営するスタジオStudio Vortexから刊行されています。